植物ホルモン・ジベレリンの構造展開をカビの大量培養により容易に得られる、GA_3を原料として推し進め、様々な類縁体を合成、ハダカ麦半切種子を用いたα-アミラーゼ誘導活性試験を並行して、種子の発芽時に於けるα-アミラーゼ生合成誘導に関する構造活性相関情報を蓄積した。その過程で、活性ジベレリンに共通する3β-水酸基を一行程にて高選択的に3α-水酸基に反転させる方法を見い出し、これにより、ジベレリン3位の構造修飾が容易になった。 上記構造活性相関研究により、構造修飾が比較的容易なジベレリンのD環二重結合とその周辺空間は活性発現に影響しない可能性が強いとの知見を得、これに基づいて、標的受容体機構の解明に有用な探索分子として高活性フォトアフィニティー標識化合物を展望し、先ず、その受容体認識部位として17置換GA_4を選んだ。カビ代謝物より比較的容易に得られるるGA_4を出発原料として、探索分子の合成中間体である17-hydroxyGA_4を16位の立体を規制して合成する方法を確立し、現在、17位水酸基を足掛りにスペーサーを介したフォトアフィニティー標識部位の導入を検討中である。 一方、これと並行して、GA_4のD環二重結合にスペーサーとして直鎖ジリオール類をラジカル付加した後、末端SH残基を起点に螢光標識し、螢光標識GA_4を合成した。加えて、ハダカ麦のヒマラヤ種の種子より、高いα-アミラーゼ誘導活性を有するアリューロン細胞プロトプラストを単離することに成功した。現在、螢光標識GA_4とプロトプラストの相互作用をセルソーター及びレーザー共焦点顕微鏡を用いて観察し、ジベレリン受容体が細胞膜上にある可能性を示唆する結果を得ている。 今後は、螢光標識GA_4とプロトプラストの相互作用を精査しジベレリン受容体が細胞膜上にあることを明確し、更に、高活性フォトアフィニティー標識ジベレリンの合成を行なうと共に、プロトプラストを細胞膜と細胞質に分画する方法を確立、より精製された細胞分画でフォトアフィニティー標識法を行ない標的受容体蛋白質を単離・同定して行きたい。
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