インターロイキン-6(IL-6)は、いまだX線結晶構造解析、NMRによって構造決定されていない。本研究においては、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、His、Trp残基のシグナル帰属の結果に基づいて、NOESYスペクトルを解析することにより、ヒトIL-6の構造解析を行った。20個のアミノ酸残基の側鎖プロトンペア間で観測されたNOEより、4本のヘリックスが束ねられている部分の部分構造を明らかにすることができた。このIL-6の部分構造の結果に基づいて、ヒトIL-6とすでにX線結晶構造解析によって構造決定されているヒトG-CSFの構造を比較してみると、両タンパクは、アミノ酸1次配列上、31%の類似性が存在するが、3次構造上においても、非常によく似た構造をとっていることがわかった。 野生株とさらに6種のIL-6部位特異変異体(L152V、L159V、L166V、L168V、L175V、L182V)のNMRスペクトルを測定することによって、アミノ酸置換による構造変化を、側鎖プロトンシグナルの化学シフト変化およびNOE変化に基づいて、考察した。L182V変異によっては、明らかな構造変化は観測されなかった。このアミノ酸変異によって、受容体結合活性の低下が観測されたことにより、Leu182は溶媒に露出しており、受容体結合に直接関与しているアミノ酸基であると結論した。L175V変異によって、有意な構造変化が観測された。ヘリックスDは折れ曲がり、ヘリックスBの方向に近づいたことが、推定できた。このヘリックス構造の変化が、受容体結合活性の低下に結びつくと考えた。L168V変異によっても、ヘリックスDがヘリックスBに近づいたことが観測できた。L152V変異によっても、有意な構造変化が観測されたが、受容体結合活性の低下は観測されなかったので、この構造変化は、受容体結合に影響を与えないと結論した。
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