インターロイキン-6(IL-6)の構造と安定性の相関を明らかにする目的で、ヘリックスD領域近傍に存在する6つのロイシン残基をそれぞれバリン残基に変異させた6つの変異体を作製し、NMRと熱量測定(DSC)によるIL-6野生株と変異体の解析を行った。pH4.2でのDSCの実験においては、IL-6野生株の熱変性過程において35℃と65℃にピークを観測し、部分変性した中間状態が存在することがわかった。L152V変異体においては、25℃ですでに部分変性しており、L175V変異体においては、野生株での65℃のピークが58℃に変化していた。熱変性過程における構造変化を明らかにする目的で、温度を25℃と50℃の間で変化させ、NMRスペクトルを測定した。NMRの測定には、DSC測定よりも高濃度のサンプルを用いた。野生株を50℃で熱処理すると、不可逆的なスペクトル変化を生じ、タンパク質のアグリゲーションによる線幅の広幅化の可能性が考えられた。特にTrp158とHis165由来のシグナルの変化が、顕著に観測された。野生株のNMRの結果と比較すると、L152V変異体はアグリゲーションしやすく、L175V変異体は不溶性の沈澱を生じやすいことが観測された。これらの結果より、Leu152、Trp158、His165はIL-6の部分変性およびそれに伴うアグリゲーションに関与するアミノ酸残基であり、Leu175はIL-6の変性およびそれに伴う不溶性の沈澱生成に関与するアミノ酸残基であると結論した。
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