研究概要 |
NMRを用いてヒトインターロイキン-6(IL-6)の部分構造を調べた。その構造が、ヒトG-CSFとよく類似していることを明らかにした。pH4.2での熱量測定(DSC)の実験においては、IL-6野生株の熱変性過程において35℃と65℃にピークを観測し、部分変性した中間状態が存在することを明らかにした。さらに6種のヘリックスD領域近傍のIL-6部位特異変異体(L152V、L159V、L166V、L168V、L175V、L182V)を、NMR、DSC、円偏向2色性(CD)を用いて解析し、IL-6の構造活性相関、構造安定性相関を調べた。L182V変異によっては、明らかな構造変化は観測されなかった。このアミノ酸変異によって、受容体結合活性の低下が観測されたことにより、Leu182は溶媒に露出しており、受容体結合に直接関与しているアミノ酸残基であると結論した。L175V変異によって、有意な構造変化が観測された。ヘリックスDは折れ曲がり、ヘリックスBの方向に近づいたことが推定された。このヘリックス構造の変化が受容体結合活性の低下に結びつくと結論した。この変異体のDSCの結果において、野生株での65℃のピークが58℃に変化していた。さらにこの変異体は野生株と比較して、不溶性の沈澱を生じやすいことが観測された。L152V変異によって、有意な構造変化が観測されたが、受容体結合活性の低下は観測されなかった。この変異体は、DSCの結果よりpH4.2,25℃ですでに部分変性しており、また野生株と比較して可溶性のアグリゲートを生じやすいことが観測された。
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