研究概要 |
昨年度に引き続きtrans,cis,cis-bis(n-butyrato)(1R,2R-cyclohexanediamine)(oxalato)platinum(IV)(C4-OHP)とtrans,cis,cis-bis(n-valerato)(1R,2R-cyclohexanediamine)(oxalato)platinum(IV)(C5-OHP)を対象として、本年度は、先ずC4-OHP,C5-OHPの経口投与での制癌効果を評価した。担癌マウスにC4-OHP又はC5-OHPを経口投与し、生存日数から制癌効果を評価した。その結果、C4-OHPではコントロール群に比べて有意な生存日数の延長は認められなかったが、C5-OHPでは有意な延長が観察され、C5-OHPは確かに経口投与で制癌作用を示すことが明らかになった。そこで、対象をC5-OHPに絞り、昨年度の研究成果を踏まえてC5-OHPの分析法を研究した。昨年度の研究で、金属亜鉛充填カラムでC5-OHPを還元した後に誘導化して検出するHPLC法を開発したが、生体試料の連続分析では、亜鉛カラムの寿命・安定性に問題があった。そこで本年度は、亜鉛カラムを用いない方法について検討し、C5-OHPを酢酸エチルで抽出後、210nm検出の逆相分配HPLCで定量する方法を開発した。検出下限は50nMと高感度であり、血漿、尿、細胞試料について分析が可能であった。次いで、C5-OHPの活性代謝物の(1R,2R-cyclohexanediamine)(oxalato)platinum(IV)(OHP)の分析法について研究した。昨年度の研究で、OHPは陽イオン交換カラムで分離溶出後、ポストカラムで誘導化し、290nmで紫外吸収検出するHPLC法を開発したが、尿試料では妨害が出ることが分かった。そこで本年度は、分離カラムを検討した結果、逆相分配系のODSカラムを用いることにより、より短い分析時間で血漿、尿、細胞試料について分析が可能となった。検出下限は50nMと高感度であった。
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