抗炎症剤であるdiclofenacを腸肝循環モデル薬物として、覚醒時ラットにおける門脈吸収および肝臓初回通過効果の新規評価法の確立を試みた。方法として軽いエーテル麻酔下でラットの門脈上部および頸静脈に同時カニューレを施し覚醒後、diclofenacを静脈瞬時投与し、適当な時間間隔で同時採血を行った。消化管からdiclofenacの再吸収がないときは門脈血と静脈血のdiclofenac濃度に差は見られなかったが、吸収があるときは門脈血濃度が静脈血濃度よりも高くなった。(門脈-静脈薬物濃度差;P-V difference)。この濃度差に門脈血流速(9.8ml/min)を掛けることにより門脈吸収速度を求めた。その積分値より門脈吸収率を求め、さらに体循環血への吸収率の比より肝臓通過率を求めた。Diclofenacは40%が腸肝循環により再吸収され、肝臓で約半分が消失して、結果として20%の体循環への吸収率となった。また同様の系において消化管に胆汁を供給したラットと供給しない覚醒ラットでdiclofenacの吸収をみたところ、胆汁を供給したラットの門脈への吸収率が明確に大きくなった。さらに麻酔剤pentobarbitalのdiclofenacの吸収の影響をみた。その結果pentobarbitalはdiclofenacの肝クリアランスは変化させないが胆汁排泄を大きく阻害することが示された。このP-V difference法の結果をさらに確かめるために、一回通過肝灌流実験を行った。この実験においても灌流液中にpentobarbitalがある場合はdiclofenacの胆汁中排泄が大きく阻害されることが示された。
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