研究概要 |
内水相にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60を、外水相にゼラチンを添加することにより、油性造影剤リピオドールを油相とした水溶性抗癌剤塩酸エピルビジン(EPI)封入W/O/Wエマルション(WOWE)を、2段階パンピング法で調製することができた。水相には市販の非イオン性造影剤(イオヘキソ-ル)注射液を用いた。 このWOWEは、多量の薬物を安定に封入,保持でき、低粘性であった。また、WOWEのヒト赤血球に対する溶血性は、現在臨床で経カテーテル動脈塞栓療法(TAE)に使用されているO/Wエマルション(OWE)よりも低かった。 次に、EPI含有及び非含有のWOWE及びOWEをラットの尾静脈から投与して、生存日数,剖検後の組織傷害について比較検討した。 その結果、OWEを投与したラットは、EPIの有無に関わらず、1.5ml/kg以上の投与で2日以内に肺水腫により死亡した。EPI含有WOWEを2.0ml/kg以上投与したラットでは、7〜9日後にEPIの毒性により衰弱死した。これらのラットの剖検結果では、胃内の出血や潰瘍、胸腺の萎縮が観察された。この胃や胸腺の外観及び組織の変化がOWEではWOWEより低投与量で観察されたことから、WOWEではEPIを油滴中に封入することにより毒性が軽減されたと考えられる。 以上より、本研究者等が開発したWOWEは現在臨床で使用されているOWEより毒性が低く安全で、TAEに適すると考えられる。今後は、動物実験により有効性を調べ、臨床応用へと研究を進める予定である。
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