平成7年度は、カチオン性リポソーム法における血清の影響及び塩基性ポリペプチドの遺伝子導入能力について検討した。 カチオン性リポソームによる遺伝子発現量は血清存在化で減少し、10%血清濃度で無添加時の約40%、50%血清濃度で20%まで低下した。血清アルブミンの添加も同様に遺伝子発現を抑制し、50mg/ml濃度で約30%まで低下した。これは、血清中のアルブミンが、遺伝子発現に大きな影響を与えていることを示している。トランスフェクション時間を延長すると発現量は増加し、30時間のインキュベーションで通常の方法の3倍の発現量がみられた。細胞毒性は、血清添加により減少し、長時間のインキュベーションは血清無添加の細胞に大きな損傷を与えた。以上のように、血清存在下では遺伝子発現量は減少するものの、毒性の低下など細胞へのダメ-ジを軽減する効果があることが示された。 ポリペプチドとしてポリリシン、ポリオルニチン及びポリオルニチン/ロイシン、ポリリシン/アラニン、ポリアルギニンについて検討した。これらのペプチドをプラスミドDNA(pSV2cat)溶液と混合後、HeLaS3細胞にトランスフェクションした。CATアッセイの結果はポリオルニチン/ロイシン、ポリオルニチン、ポリアルギニンで顕著な遺伝子発現が見られた。しかし、リシンから成るポリペプチドでは発現量は僅かであった。これらのペプチドの発現能力には、分子量依存性が見られ、分子量20万のポリオルニチンで最大の発現量を示し、分子量1万では全く発現が見られなかった。以上の結果より、オルニチン、アルギニンを主要な構成アミノ酸とする大きなポリペプチドは遺伝子キャリアーとして有望であることが示された。
|