研究概要 |
胎児性胆汁酸生合成経路の解明のために,前年度に確立した基質の合成及び分析法を用いて,以下の事項を検討した. 1)ラット肝を用いた代謝研究 胎児性胆汁酸前駆体と推定される1β,3α,7α,12α-及び3α,6α,7α,12α-tetrahydroxy-5β-cholestan-26-oic acidを基質としてラット肝ホモジネート800xg上清とインキュベートし,その代謝産物の定量分析を行った.その結果,上記C27-胆汁酸も一次胆汁酸(コール酸,ケノデオキシコール酸)の生成と同一の経路で胎児性胆汁酸(1β-及び6α-水酸化コール酸)を生成することが判明し,胎児性胆汁酸生合成経路の解明に向けた新たな知見が得られた.さらに,胆汁酸生合成経路におけるβ-酸化系酵素の基質特異性について検討し,ステロイド母核上の水酸基数が側鎖開裂にも影響を及ぼすことを明らかにすることができた.また,生合成中間体の立体化学についても検討し,中間体である24-水酸化コレスタン酸は(24R,25R)-及び(24S,25S)-体が主として生成することを明らかとした. 先天性胆汁酸代謝異常症の解析 前年度に確立したガスクロマトグラフィーによる分析法を用いて,胆汁酸代謝異常症であるZellweger患者尿中の胆汁酸の定量分析を行った.その結果,胆汁酸生合成中間体であるC27-胆汁酸が大量に蓄積し,明らかに酸素欠損による異常が認められた.さらに,従来認められていなかった(24Z)-3α,7α,12α-trihydroxy-5β-cholest-24-en-26-oic acidの存在が確認され,本化合物を経由する他の胆汁酸生合成経路が存在する可能性も示唆された.本分析法は上記疾患の容易な診断法の一つとなるものと考えられる.
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