研究概要 |
1.ラットスペルミジン合成酵素のアミノ酸配列と活性部位に位置すると思われる遊離SH基の検索:主に市販の蛍光SH試薬N-(iodoacetylaminoethyl)-5-naphthyl-amine-1-sulfonic acid (IAEDANS)を用いて検討した.本酵素に基質の一つである脱炭酸化S-アデノシルメチオニン(deAdoMet)を加えてIAEDANSと反応させると,酵素はほとんど標識されなかったが,deAdoMet非存在下では強く標識されかつ失活も速やかであったことから,活性部位付近に存在するSH基との反応が考えられた.実際にdeAdoMetなしにIAEDANSで標識した酵素のSDS-PAGEの移動度から,凡そ5〜6モル分のIAEDANSが結合したと考えられ,更に加水分解して得られたアミノ酸分析からも相応量のカルボキシメチルシステインの存在が確認された.そこで標識酵素をリジルエンドペプチダーゼで処理し,得られた標識ペプチドを調べてアミノ酸配列中のどのシステインが標識されたかを検討した.その結果,4ペプチド断片が確認され,少なくとも4個のシステインが同定され,cDNAから類推したヒトスペルミジン合成酵素と比較して,あと2個のシステインの標識が考えられた.得られた結果は上記IAEDANSの標識数ともよく一致しており,活性部位近辺には複数の遊離SH基が存在することを示唆している.2.タンパク質における遊離SH基周辺アミノ酸配列の空間的位置関係を調べるための基礎検討:分子内にSH基と反応する官能基及び光感受性官能基の両者を同時に有する二機能性試薬として4-azido-iodoaceta-midobenzene (AIAB)を合成し,その結果について若干検討した.牛血清アルブミン中に1個存在する遊離のSH基とAIABとの反応性を調べた結果,反応時間が長引くとシステイン残基以外のアミノ酸残基ともAIABが反応することがわかった.
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