研究概要 |
1.ラットスペルミジン合成酵素のアミノ酸配列と活性部位に位置すると思われる遊離SH基の検索:最近,cDNANを用いてラット由来酵素の一次構造が報告されたが,N端側凡そ15アミノ酸残基がヒト,マウス由来酵素のそれと大幅に異なり,また,C端側の凡そ15残基も我々がエドマン法で得た結果と大幅に異なっていた.そのためエドマン法でのアミノ酸配列研究を続行し,N端側凡そ30残基を残して一次構造の概要を知ることができた.更にアミノ酸配列の全貌を知るために,新たに導入されたTOF-MASSも利用して鋭意検討中である.活性部位の遊離SH基の存在に関する新たな情報として,ジチオスレイトールを除き本酵素をインキュベートする失格条件下で,市販の蛍光SH試薬IAEDANSを用いて経時的に蛍光標識を行ったところ,失格と蛍光標識の減少との間に明瞭な相関が認められた.この蛍光標識の減少は,リジルエンドペプチダーゼ処理により得られるシステイン含有の5種類のペプチド断片全てに見られ,これら複数のSH基が本酵素活性発現に密接に関わっていることが示唆された.2.スペルミジン合成酵素の遊離SH基周辺アミノ酸配列の空間的位置関係を調べるための二機能性SH試薬:本酵素の活性部位に進入可能と考えられる4-azido-iodoacetamidobenzeneが,水に難溶性でかつSH基以外のアミノ酸残基とも反応するなどの欠点が認められ,新たな試薬のデザインが必要になった.活性部位内の複数のSH基を仮定して,それらのSH基間に橋渡しできるような二機能性試薬,例えば最も簡単な化合物として1,2-diiodoethane,も有用と考えられ,一連の化合物を各種市販品も含めて準備中である.また,それらの解析には今後TOF-MASSを十分に活用すべく予試験を行っている.
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