我々は現在までに以下の点について明らかにした。高分解能キャピラリーゲル電気泳動による一本鎖高次構造多型(SSCP)を検討するため、対象遺伝子としてN-ras及び細菌由来のDive E等を用い、ゲル濃度、分離温度、PCR生成物の塩基数について検討した。その結果、ゲル濃度8%、分離温度25℃、PCR生成物の塩基の長さ59塩基から359塩基で、一塩基変異からなる癌遺伝子のSSCP解析が可能になった。 実際の臨床検体においては、ヒト遺伝子や極微量の試料からDNAを抽出しなければならない。また、SSCP解析では二本鎖DNAから二本以上の一本差DNAの多型が検出されるため、泳動パターンは複雑になる。特に対立遺伝子がヘテロの場合にあh多型同士が重なったSSCPバンドが得られ、検出が不可能になる場合がある。従って、センス又はアンチセンスDNAどちらかを選択的に検出することが必要である。次にSSCPの高感度化と選択性の向上化について検討した。その方法はPCRのプライマーの一方に蛍光剤(テキサスレッド)を標識し、PCRにより増幅と標識を行う。このものを次にHe-Neレザー蛍光検出を備えたキャピラリー電気泳動装置により解析した。その結果K-ras遺伝子の七つの変異を容易に検出することができた。また検出の感度は紫外部吸収(260nm)より1000倍以上高感度であった。さらに本研究では一度に多数の分析を可能にするため、レーザー蛍光検出とマルチキャピラリー(20本のキャピラリーを用いて20検体を同時分析)による方法を開発した。この方法は多検体分析を必要とする臨床診断法として有用である。
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