本研究により次のような成果がえられた。ポリマー溶液及びキャピラリーゲル電気泳動による二本鎖DNA(72〜1300bp)及びPCR生成物(70〜500bp相当)の分離系を確立し、PCR生成物を精製することなく直接分析することを可能にした。さらに高感度検出を可能にするためレーザー蛍光検出によるフェニルケトン尿症及び中鎖アシルCoA脱水素酵素欠損症のAllele Specific Polymerase chain reaction並びにPCR-Restriction fragment length polymorphismの分析を行った。次に高分解能キャピラリーゲル電気泳動による一本鎖高次構造多型(SSCP)検出法の開発を行った。電気泳動条件、PCR生成物の塩基数について検討した。その結果、ゲル濃度8%、分離温度25℃、PCR生成物の塩基の長さ59塩基から359塩基で、一塩基変異からなる癌遺伝子のSSCP解析が可能になった。 実際の臨床検体においては、ヒト遺伝子を対象とするため高感度化が必要不可欠である。また、SSCP解析では二本鎖DNAから二本以上の一方差DNAの多型が検出されるため、泳動パターンは複雑になる。そこでSSCPの高感度化と選択性の向上化について検討した。PCRにより増幅と蛍光(テキサスレッド)標識を行う。このものを一本鎖に解離後、He-Neレザー蛍光検出装置を備えたキャピラリー電気泳動装置により解析した。その結果K-ras遺伝子の7つの変異を容易に検出することができた。本法は260nmでのUV検出より1000倍以上高感度であった。さらに本研究では一度に多数の分析を可能にするため、レーザー蛍光検出とマルチキャピラリー(20本のキャピラリーを用いて20検体を同時分析)による方法を開発した。この方法は多検体分析を必要とする臨床診断法として有用である。
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