著者は、これまでにラット膀胱癌細胞株の一部に腫瘍壊死因子(TNFα)、インターロイキン1 (IL-1α)が構成的に産生されることを見いだした。IL-1およびTNFは炎症・免疫反応の中心的メディエータであり、これらの癌細胞増殖への影響を調べることは興味深い。本研究では、癌細胞における両サイトカインの産生過程、自己増殖因子としての可能性、さらに担癌動物の血清、癌組織中のサイトカイン活性について検討した。 1.ラット膀胱癌細胞株のC19細胞とBC50細胞株のIL-1、TNFαの細胞内局在性、分泌性を調べた。C19細胞においてはIL-1活性は細胞膜(パラホルムアルデヒド固定化癌細胞を測定系に加える)とサイトゾルに見られ、細胞膜破壊に伴って培地中に遊離した。サイトゾルおよび膜IL-1活性は特異抗体との反応性からIL-1αと確認された。TNF活性は細胞膜とサイトゾルに一定程度存在するが、恒常的に細胞外に分泌された。C50細胞においてはTNFの産生はなく、IL-1活性は細胞膜とサイトゾルに高レベルに存在するが、この活性は細胞膜破壊が起こっても培地中に遊離しなかった。次に、IL-1、TNFの癌細胞増殖への影響を調べる目的で、これらを培養系に加えところ、両サイトカインとも一定濃度範囲でC19細胞とBC50細胞の増殖を有意に促進した。以上の事実は、膀胱癌が産生するIL-1、TNFが自己増殖促進因子として機能する可能性を示唆する。この作用に膜局在性のIL-1、TNFの役割が注目される。 C19細胞の親株であるBC31ad担癌ラットの血清、癌組織についてTNF、IL-1活性を検索したが両活性は認められなかった。サイトカイン阻害因子を調べたところ、血清にIL-1活性阻害因子が見いだされた。今後は癌細胞の宿主における増殖性とサイトカイン発現の関連を明らかにしたい。
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