ステロイド性抗炎症薬dexamethasone、及びキナーゼ阻害薬quercetinが、MAPキナーゼの活性化を抑制することをすでに明らかにしていたが、本研究では、さらに、calphostin CがMAPキナーゼの活性化を抑制することを明らかにした。さらに、ラット肥満細胞株RBL-2H3細胞を用いて、これらの薬物のMAPキナーゼ活性化抑制作用機序を解析するとともに、抗アレルギー性作用の一つの指標としてアラキドン酸遊離に対する作用を検討した。 1. MAPキナーゼの活性化阻害薬の作用機序の解析 MAPキナーゼの活性化には、低分子量G蛋白質rasの活性化に続いてraf1、及びMEK1の活性化が関与している。そこで、dexamethasone、及びcalphostin CのMAPキナーゼ活性化抑制作用点のひとつとしてraf1の活性化に対する作用を解析した。Cell lysate中のraf1様活性は、無刺激下ではほとんど認められなかったが、抗原で刺激することにより著しく増大した。このraf1様活性の増大は、dexmethasone及びcalphostin Cで前処理することにより強く抑制された。したがって、これらの薬物はraf1の活性化の段階を抑制してMAPキナーゼの活性化を抑制していることが示唆された(投稿準備中)。 2.MAPキナーゼ阻害薬の抗アレルギー作用の検討 Dexamethasone、及びcalphostin Cのアラキドン酸遊離に対する作用を比較検討した。その結果、どちらの薬物もMAPキナーゼの活性化を抑制する濃度においてアラキドン酸遊離を抑制した。この結果から、肥満細胞を抗原で刺激して数分以内にみられるアラキドン酸放出にはMAPキナーゼによるホスホリパーゼA2の活性化が重要であり、MAPキナーゼの活性化を抑制する薬物はアラキドン酸遊離を抑制して抗アレルギー作用を発現しうることが示唆された。
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