申請者は当初の計画に従い、クッパー細胞及び骨髄細胞を細胞膜染色性の蛍光色素で標識し、これらの細胞の生体内挙動を観察した。その結果いくつかの興味深い知見を得ることが出来た。まず、標識されたクッパー細胞の生体内挙動を追跡したところ、予想に反して、クッパー細胞は組織特異的、すなわち肝臓特異的に集積しなかった。これはクッパー細胞が、臓器特異的なホ-ミングレセプターを持っていないことを示唆する結果であった。一方興味深いことに標識された骨髄細胞は肝臓にその大部分が集積した。この集積した骨髄細胞を掲示的に追跡していくと、これらの細胞群は肝臓内で増殖し、マクロファージ上の形態を示し、さらにマクロファージ特異抗原を持ち、マクロファージの機能である貧食能を示し、非特異的エステラーゼ染色により染まるというマクロファージに特異的な機能をすべて備えていた。また、これらの知見はin vitroの結果でも確認された。すなわち、肝実質細胞と骨髄細胞を共培養すると、骨髄細胞はマクロファージ様細胞に分化、増殖する。これらの細胞は機能的にみてもマクロファージの機能を完全に備えていた。これらの申請者の知見は肝臓は骨髄細胞がマクロファージに分化するための理想的な臓器であり、肝特異的なマクロファージといわれるクッパー細胞は肝臓内で骨髄細胞から、直接分化増殖していることを強く示唆する結果である。
|