脂溶性薬物としてはビタミンEとユビデカレノンを用いて実験を行った。経口ゾンデを用いてラット胃内に投与したのち、経時的にリンパ液あるいは門脈血を採取して、それぞれに移行した薬物をHPLCを用いて定量することにより、リンパならびに門脈への薬物の移行性を検討した。その結果、ユビデカレノンなどの脂溶性薬物は門脈系へはほとんど吸収されず、もっぱらリンパ系へ吸収されていることが判明した。また、吸収促進剤として、グリセロールモノオレートを用いると、リンパ吸収がほぼ3倍上昇することが認められ、さらにユビデカレノンと吸収促進剤として用いたグリセロールモノオレートの最適な混合比は1:4(重量比)付近であることが判明した。また、リンパ流量と、ユビデカレノンの吸収量についての関連性を検討したが、この両者には相関性が認められず、ユビデカレノンのリンパ吸収においては、リンパの流速が律速段階ではないと考えられた。また、超音波処理によりユビデカレノンの分散性を向上させたサンプルを用いた場合にも、リンパ吸収の過程が早まることが認められない点から、本実験条件下では薬物の溶解・分散過程も律速となってはいないと考えられた。そして、クロロキン、モネンシンなどの endocytosis inhibitors によりユビデカレノンのリンパ吸収が著しく抑制された動物実験の結果から、 endocytosis がユビデカレノンのリンパ吸収において重要な役割を担っていることを始めて明らかにすることができた。
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