脂溶性薬物として、主にユビデカレノンを用いて実験を行なった。経口ゾンデを用いてラット胃内に薬物を投与したのち、経時的にリンパ液あるいは門脈血を採取して、それぞれに移行した薬物をHPLCを用いて定量することにより、リンパならびに門脈への吸収実験を行なった。その結果、ユビデカレノンなどの脂溶性薬物は門脈系へはほとんど吸収されず、もっぱらリンパ系へ吸収されていることが判明した。また、吸収促進剤として、グリセロールモノオレートを用いると、リンパ吸収がほぼ3倍上昇することが認められた。また、モネンシンなどのendocytosis inhibitorによりユビデカレノンのリンパ吸収が著しく抑制され、in vitroの結合実験でも阻害が認められたことからendocytosisがユビデカレノンのリンパ吸収において重要な役割を担っていることが明らかとなった。さらに研究の途上において、酸化体として投与したユビデカレノンの85%が還元体としてリンパ液中に出現することを見いだした。本知見は文献上知られていなかった事実であるので、さらに検討を加えることとした。その結果、ユビデカレノンの還元反応は、消化管の中やリンパ液中で起こっているのではなく、吸収過程すなわち小腸上皮細胞等を通過する際に酵素によって起こっていることを明らかにした。また、この酵素は-SH基の阻害剤に感受性を有しており、細胞膜に存在していることが判明した。 このようなことから、リンパ吸収においてendocytosisを介して小腸上皮細胞を通過する際における、酵素によるユビデカレノンの還元体生成の意義を検討することが再重要である。
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