PGE受容体には、4つのサブタイプが存在し、PGE_2の複雑な生理作用を担っている。これらのサブタイプの中で、EP3受容体にはC末端鎖の構造のみが異なる3つのアイソフォームが存在する。3つのアイソフォームのGi活性を調べると、アゴニストに依存しない常時発現している活性で異なり、それぞれアゴニスト非依存性活性の全くないもの、部分的にあるもの、殆ど非依存的な受容体であった。一方、PGE受容体のサブタイプの中で、EP2とPE4受容体は共にGsを介してアデニル酸シクラーゼを活性化する。しかし、両受容体はその活性の制御機構において異なり、EP4受容体は受容体キナーゼによる短期脱感作を受けるが、EP2受容体は全く受けなかった。又、PGE_2の代謝産物に対する感受性でも異なり、EP4受容体は代謝産物に全く反応しないが、EP2受容体はかなり反応した。これらのことから、EP4受容体は一過性の反応性を示す受容体であるのに対し、EP2受容体は持続的作用を示す受容体であることがわかった。この様に、PGE_2の生理作用の多様性は、PGE受容体に機能的に異なる様々なサブタイプやアイソフォームが存在することに起因するものと思われる。 4つのPGE受容体サブタイプの中で、EP3受容体が中枢において最も発現量が高くかつ幅広く分布していた。その発現はニューロンに特異的で、特に海馬、視床下部、脳幹に多く見られた。神経系におけるEP3受容体の機能を調べるため、PC12細胞に受容体を発現させると、EP3アゴニストは百日咳毒素非感受性の三量体G蛋白質を介して、低分子量G蛋白質のRhoを活性化し、神経突起の退縮と成長円錐の消失を引き起こした。このことから、EP3受容体はPhoを介して神経細胞の形態を制御し、神経の可塑性を引き起こす可能性が示唆された。
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