研究概要 |
1.セラミド分子種の微量定量法の開発; セラミドを蛍光ラベルし、C17-セラミドを内部標準物質としてHPLCで定量する方法を開発した。スタンダードとして化学合成したセラミド分子種10種をアントラセンカルボキシルエステル(AC-セラミド)とし、その分離と溶出位置を調べたところ、逆相HPLCで分離定量できることがわかった。培養細胞の細胞内遊離セラミドの定量にこの方法を適用したところ、pmolレベルのセラミドの定量が十分可能であり、細胞10^8あたり、HL60で3.9±0.42μg(約11nmol)、U937細胞で2.6±0.43μg(約7.4nmol)存在することがわかった。またHL60細胞ではスフィンゴミエリンを構成するセラミド分子種としてはC16:0が50%以上占めているのに対し、遊離のセラミドでは、C24:1,C24:0がC16:0に匹敵する割合で存在していた。遊離セラミドの分子種の定量はこれが初めてであり、またこの定量法が活性化された培養細胞中の遊離セラミド分子種の変動を調べるためなど様々な目的に充分使用できることが確かめられた。 2.各種セラミドアナログによるアポトーシスの誘導; 前年度の報告書に記載したように、スフィンゴシンの天然型(trans型)及びcis型、三重結合型を化学合成し。そのN-hexanoyl化合物(C6-セラミド、C6-cis-セラミド、C6-TRP-セラミド)についてアポトーシス誘導活性を調べた。活性の強さはC6-TRP-セラミド>C6-cis-セラミド>C6-セラミドであり、trans-configulationはアポトーシス誘導活性に必ずしも必要ではないことがわかった。またアポートーシス誘導活性はスフィンゴシン型にも見られ、この場合も三重結合を持つものの活性が最も強いことがわかった。最少有効量は、スフィンゴシン型とセラミド型でほぼ同量であり、セラミド型の活性発現がN-acyl鎖の水解後に起こる可能性は少ないと考えられた。 3.セラミド及びスフィンゴシンによるアポトーシス誘導に及ぼす外因性脂肪酸の効果; HL60細胞をオレイン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)を加え培養し、アポトーシス感受性を調べたところ、膜透過性セラミドに対する感受性に変化が見られなかったが、スフィンゴシンに対する感受性は、DHA添加細胞では減少していた。このことから、スフィンゴシンとセラミドのアポトーシス誘導のメカニズムが異なること、またDHAがスフィンゴシンなどPKC阻害依存的アポトーシスを抑制する可能性が示された。
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