腸炎ビブリオは生育にNa^+を要求する低度好塩菌である。我々はすでに腸炎ビブリオの主要なNa^+排出系(NhaA系)の遺伝子クローニングと構造解析に成功しているが、7年度の本研究により、第二のNa^+輸送系(排出系)の遺伝子をクローニングしシーケンスを決定することができた。その一次構造は最初にクローニングされたもの(NhaA系)とは完全に異なっていたが、大腸菌で知られているNhaB系とかなり高い相同性を示した。遺伝子クローニングによりこの系単独の性質を調べることが可能になり、現在解析を進めている。また、主要なNa^+排出系をすべて欠損する大腸菌変異株(我々が構築したもの)にそれぞれのNa^+排出系の遺伝子を導入することにより、それぞれの系の役割を解析することが可能になった。 一方、黄色ブドウ球菌は耐塩菌である。この菌のNa^+輸送をはじめとするイオン輸送系の解析には、反転膜小胞の作製法の開発が重要な点であるが、7年度の研究によりその作製法を完成させることができた。その方法により作製した反転膜小胞を用い、蛍光クエンチング法により、黄色ブドウ球菌の膜に存在するNa^+/H^+アンチポーターの性質を明らかにした。そして、そのNa^+輸送系(排出系)の遺伝子のクローニングを行った。現在、この遺伝子についてシーケンスの決定を行っている。 本年度の研究により、これらの菌におけるNa^+輸送系の特徴が明らかになりつつある。
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