研究概要 |
シナプトフィジンはマイクロベジクルのよいマーカーであり、これを指標として、我々は、最近、脳下垂体後葉と松果体のマイクロベジクルの単離に成功した。直径が脳下垂体後葉の場合、約60nm、松果体のものはシナプス小胞と同じ50nmであった。いずれも内部の電子密度が低い特徴がある。 免疫電子顕微鏡法とイムノブロッティングを組み合わせて、マイクロベジクルの構成タンパクを解析した。その結果、マイクロベジクルにはシナプトタグミンやVAMP2等のexocytosisに関与する一連のタンパクを含んでいた。また,マイクロベジクルの総タンパクの数パーセントをV-ATPaseが占めていた。従って、ATPの添加によりこのオルガネラは内部が酸性となり正の膜電位が形成される。このプロトンの電気化学的ポテンシャル差を利用して、脳下垂体後葉のマイクロベジクルはアドレナリンを、松果体のものはグルタミン酸をATP依存性に能動輸送した。従って、マイクロベジクルは伝達物質の濃縮装置も備えており、機能的にもシナプス小胞と同等であることがわかった。 松果体マイクロベジクルのグルタミン酸トランスポーターにつき以下の性質を明らかにした。(1)このトランスポーターは、膜電位を駆動力として用いる能動輸送系であり、このエネルギーはV-ATPaseが供給する。(2)低濃度(4-5mM)の塩素イオンにより10倍以上活性化される。この活性化は、トランスポーター内に存在する塩素イオン結合部位を介して起こる。Fイオンはこの結合部位を塩素イオンと競合するこtにより阻害する。これらの性質はシナプス小胞のグルタミン酸トランスポーターの性質と一致しており、同じトランスポーター(vesicular glutamate transporter)が松果体マイクロベジクルでも機能していると結論した。また、さらに、(3)この輸送系rの基質特異性をはじめて詳細に調べ、基質認識に関する情報を得た。
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