ヒト正常体細胞は、胎発生の時期に分裂可能回数が予めプログラムされているものと考えられ、ヒトの加齢老化にともなって、体細胞の分裂可能回数が減少する。体細胞が分裂を停止するのは、プログラムに従って増殖停止に関係する遺伝子の発現が上昇するためと考えられ、実際に候補となる遺伝子が同定されつつある。しかし、プログラムが働いて、実際に増殖停止するまでのシグナル伝達には多くの遺伝子が関与しているはずで、これらの遺伝子のほとんどは明らかになっていない。本研究では、細胞老化時に発現昴進する遺伝子をクローニングするため、サブトラクションcDNAライブラリーをスクリーニングして、新たな遺伝子を取ることを目指した。前年度までの研究から、インターフェロンで誘導される遺伝子の一つである6-16が老化細胞で発現昴進することがわかっていたが、本遺伝子の機能は未知であった。本研究により、6-16遺伝子がアポトーシス抑制機能を有する可能性がでてきた。老化細胞が死をまぬがれて長期生存する機構を担う可能性があり、次年度更に確認する。老化細胞で発現上昇する別のcDNAであるE4eは、細胞膜のミクログロブリン蛋白質と非常に類似していたが、報告されたサイズと違いがあった。 次年度はこのcDNAの構造と機能を更に明らかにする。
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