昨年度よりシナップス可塑性を指標としたパーキンソン氏病モデル動物の作成を手掛けてきた。パーキンソン氏病では運動活性のリズムが低下し、夜間の睡眠も低下するといった報告、すなわちパーキンソン氏病がサーカディアンリズムに係わっている可能性が考えられている。ところでサーカディアンリズムは視床下部の視交差上核に起源があり、外界の光入力は体内時計をリセットし、この興奮性光入力は履歴性(可塑性)を有することも明らかとなっている。そこで本年度はパーキンソン視病モデル動物の作成をサーカディアンリズムのシナップス可塑性の関点から追求した。(1)視神経から視交差上核への興奮性入力にシナップス可塑性が生じるか否かについて調べた結果、視神経は高頻度刺激により、時刻依存的に視交差上核のシナップス電位が増大し、この作用は1時間以上持続した(いわゆる長期増強現象)。また、グルタメートを潅流応用しても同様な現象が観察された。したがって、光同調に長期増強現象が係わっているものと考えられた。(2)パーキンソン氏病モデル動物はサルにMTPTを投与したり、ラットに6-OHDAやレセルピンを投与し、脳内のカテコールアミン減少させることによって運動失調を引き起こすことを指標としている。そこで、サーカディアンリズムに対するレセルピン投与の影響を検討し、新規なパーキンソン氏病モデル動物を作成することとした。ハムスターの輪回し行動の輪回し数はレセルピン(3mg/kg)の投与により低下し、さらに輪回し開始時刻も不安定となり、前進する例も見られた。ハムスター輪回し行動リズムのレセルピンによる障害は新規なパーキンソン氏病モデル動物になることが判明した。また、レセルピン投与により位相関係が不安定になったのは、光同調のシナップス可塑性がレセルピンによって障害された可能性も考えられた。
|