パーキンソン氏病は、老化に伴って多発する筋強剛、無動、振戦、姿勢保持障害等の症状を呈する神経変性疾患である。この疾病は黒質-線条体のドーパミン神経系が変性を受け、ドーパミン欠乏が起こることに由来すると思われる。線条体の一過性の高頻度電気刺激により、ドーパミン遊離が長時間(約2時間)持続することが明らかになった。ハロペリドールなどの抗精神病薬はその副作用としてパーキンソン氏病症状、動物等ではカタレプシ-が出現することが知られている。ハロペリドール投与は、LTP現象を抑制することが明らかとなった。また、線状体の神経変性を引き起こす脳虚血をラットに施すと、その後ドーパミン遊離の可塑的変化がドーパミンの含量などより敏感に障害され易いことが明らかとなった。パーキンソン氏病モデル動物の作成をサーカディアンリズムのシナップス可塑性の関点から追究した。視神経から視交差上核への興奮性入力にシナップス可塑性が生じるか否かについて調べた結果、視神経の高頻度刺激により、時刻依存的に視交差上核のシナップス電位が増大し、この作用は1時間以上持続した。パーキンソン氏病モデル動物はサルにMTPTを投与したり、ラットに6-OHDAやレセルピンを投与し、運動失調を引き起こすことを指標としている。そこで、サーカディアンリズムに対するレセルピン投与の影響を検討し、新規なパーキンソン氏病モデル動物を作成することとした。ハムスターの輪回し行動の輪回し数はレセルピン(3mg/kg)の投与により低下し、さらに輪回し開始時刻も不安定となり、前進する例も見られた。ハムスター輪回し行動リズムのレセルピンによる障害は新規なパーキンソン氏病モデル動物になることが判明した。以上の研究を通じて、パーキンソン氏病モデルの開発と評価の多面的展開ができたものと考えられる。今後これらのモデル動物を使用してより有用性のある抗パーキンソン氏病の開発に寄与したい。
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