マウスB細胞由来のミエローマ細胞であるNS-1および牛赤血球膜より、GPIアンカー蛋白質の検索を行った。NS-1細胞には少なくとも8種類のGPIアンカー蛋白質の存在を確認した。その内、4種類については新たなGPIアンカー蛋白質である可能性が示された。牛赤血球膜ではアセチルコリンエステラーゼ以外に4種類のGPIアンカー蛋白質の存在の可能性を確認した。これらのGPIアンカー蛋白質はGC-MSによりmyo-イノシトールを同定することにより最終的に確認した。 myo-イノシトール以外の異性体であるchiro-イノシトールがGPIアンカー蛋白質の分解産物より同定された。種々のGPIアンカー蛋白質におけるchiro-イノシトールの検出量は、加水分解の条件により異なっていた。6H HCl溶液中では20-60%の異性化が見られ。N2ガス気流中では0.1%以下の異性化しかおこらなかった。ホスファチジルイノシトールやイノシトール1ーリン酸の場合6N塩酸溶液中の加水分解でも異性化はおこらなかった。このことはmyo-イノシトールの6-位にグルコサミン、1-位にリン酸の置換基を持つGPIアンカーにおける加水分解において特異的に異性化が生じる物と考えられる。 我々はGPIアンカーの構造解析に、従来から質量分析に用いられているイオン化法に比べ、より高感度で、かつまたソフトなイオン化法であるエレクトロスプレーイオン化とmatrix-assisted laser dessorption inonization(MALDI)を用いた。GPIアンカーペプチドのmicroheterogeneity及びそれから生じる特異的なフラグメントが同定された。ESI/MS/MSとMALDI/TOF/MSは10pmpl以下の微量のGPIアンカーの構造解析においても有効かつ高感度な方法であることが判った。
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