細胞内情報伝達におけるレセプター会合体の機能を明らかにするため、まず、分子量、ハプテン密度、表面電荷などの異なる抗原蛋白質を作製した。同一ハプテンを特異的に認識するB細胞ハイブリドーマ(TP67.21)と好塩基球白血病細胞株(RBL-2H3)を用いて、抗原蛋白質で活性化されたときの細胞内カルシウムイオン濃度、抗体産生量、脱顆粒量などを測定したところ、両者の細胞間で違いがみられた。また、ハプテンを組み込んだ硬さの異なるリポソームを用いてTP67.21およびRBL-2H3を抗原刺激しても両細胞間に違いが見られた。この結果は、いずれも、RBL-2H3には細胞膜上のレセプターと抗原蛋白質との間に柔軟なIgE分子が存在していることによるものと考えられた。また、カルシウムプローブと蛍光標識したIgE分子をRBL-2H3に負荷し、共焦点レーザ顕微鏡により細胞内カルシウムイオン濃度とIgE分子の動態を単一生細胞で同時にリアルタイムで観察することに成功した。その結果、IgE分子の細胞膜上での会合はカルシウムイオン濃度が上昇した後も長期にわたって観察された。しかし、カルシウムイオン濃度が高いレベルで持続しているところに、単量体のハプテンを高濃度加えるとカルシウムイオン濃度は元のレベルまで減少し、レセプターの会合体は速やかに消失することが明らかになった。 また、変異IgEレセプターを発現させた肥満細胞を用いてレセプターの会合体の形成と脱顆粒反応を単一細胞で追究した。その結果、レセプターの取り込みや脱顆粒反応に至る細胞内情報伝達機構の活性化の誘導には、IgEレセプターのβ鎖およびγ鎖のC末端ドメインが重要であることが明らかになった。
|