アルキルラジカル生成はアゾ色素であるAAPHを、ヒドロキシラジカルはキサンチン-キサンチンオキシダーゼ(XO-XOD)系を用いて過酸化反応を赤血球膜に誘発し、生成される過酸化1次生成物であるリン脂質ヒドロペルオキシド、2次生成物であるアルデヒド基を有するリン脂質の生成を調べた。過酸化によるコリン型リン脂質(CGP)の消失とともに、AAPH系ではリン脂質ヒドロペルオキシドの生成は見られたが、XO-XOD系ではほとんど生成しなかった。2次過酸化生成物であるアルデヒド型リン脂質は主にAAPH系で生成しており、XO/XODでの産生は少ないものであった。遊離アルデヒドを調べたところ、主にマロンジアルデヒド、ヒドロキシノネナ-ルであり、その生成量はXO-XOD系のほうがAAPHよりも顕著に高いことが分かった。これらの結果より、過酸化反応により、生成される酸化型リン脂質の生成様相は大きく異なることが明かとなった。 酸化型リン脂質の生成を生体レベルで検討するため、3週令、60週令ラットの脳、心臓、肝臓、腎臓の酸化型リン脂質を測定し、老化おける変動について調べた。TBARSはいずれの臓器においても有意に増加しており、特に脳、心臓では顕著であった。老齢ラットではリン脂質ヒドロペルオキシドは若齢ラットに比較して、脳で約8倍、腎臓で3倍、心臓で2倍と高い値を示した。アルデヒド型リン脂質の同様にいずれの臓器においても顕著に高い値を示しており、老化とともに酸化型リン脂質の蓄積が見られた。 以上の結果より、生体膜レベル、および生体レベルにおいて、生体膜において酸化型リン脂質が生成しうることを初めて明らかにした。
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