研究概要 |
本研究を遂行するためには、glycyrrhizin生合成の最終段階で関与すると推定されるチトクロームP-450遺伝子を単離し,これをA.rhizogenesを介して甘草属植物に導入するため,第一に,各種甘草でのA.rhizogenesを介した外来遺伝子導入条件と導入遺伝子の検出条件を検討した。これと平行して,第二に,チトクロームP-450遺伝子単離のための諸条件を検討した。6種の甘草属植物を無菌的に播種して得られた芽生えあるいは幼植物体より得た葉,茎などを材料として用い,これに3株のA.rhizogenesを直接接種法により塗布感染処理した。生じた不定根を切り取り,Claforanを含むMurashige & Skoog寒天培地で除菌処理した後opineの存在を調べた。以上のようにして,6種の甘草より27株の毛状根の誘導に成功した。 次に約40週水耕栽培しglycyrrhizinが検出されたGlycyrrhiza uralensisの根よりRNAを抽出した。このRNAを用いてRT-PCR法により逆転写反応を行い。得られたcDNAをtemplateとしてsense側のprimerをこれまで植物から単離されたP-450遺伝子の保存領域を含むCおよびDドメインよりdesignし,antisense側はprimerM13M4を用いてPCRを行った。PCR product中,500bp付近に数本のバンドが検出された。これらのバンドからDNAを回収しTA cloning kitを用いてpCRTMIIベクターに組み込んだ。インサートの確認はM13forward primerおよびM13 reverse primerを用いて,コロニーPCRを行うことにより確認した。500bp付近にインサートを持つことが確認されたコロニーから,アルカリ-SDS法を用いてプラスミドを抽出し,dideoxy法によりインサートの塩基配列を決定した。これまでに計33クローンのシークエンスを行ったが,現在までのところ,P-450遺伝子の判定基準となるヘム結合中心であるシステインのコドンをもつクローンは得られていない。 現在,水耕栽培でglycyrrhizinの生成が確認されているG.uralensisとglycyrrhizinが生成されないことが知られているG.echinataの双方から抽出したtotalRNAからcDNAを調製しsubtractive hybridization法によりP-450遺伝子を単離することを試みている。
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