研究概要 |
分化を誘導することにより癌細胞の増殖性や腫瘍性を喪失させようとする制癌の研究が,非リンパ球性白血病細胞を中心に行なわれ、さまざまな分化誘導物質が明らかにされてきた。トランス型のレチノイン酸(all-trans retinoic acid;ATRA)が急性前骨髄球性白血病(APL)患者に著効を示すことが明らかとなり分化誘導療法に光明を与えることになったが、その有効性はAPLに限局されており、患者数の多い骨髄芽球、単芽球の分化段階にある白血病に対しては、ATRAを含め有効な分化誘導剤は開発されていない。本研究では急性骨髄性白血病に対する分化誘導療法の新しいストラテジーを確立することを目的としてin vitro培養系でヒト骨髄性白血病細胞ML-1およびKG-1を顆粒球方向へ分化誘導することを試みた。その結果以下のことが明らかになった。(1)レチノイン酸とサイトカイン特にGM-CSFを併用すると相乗的に分化が誘導された。(2)この組合せでは時間の経過と共に、顆粒球の特徴である分葉核あるいは桿状核をもった細胞が多数出現した(両方で80%以上)。(3)同時にDNA合成活性が低下した。(4)レチノイン酸存在下GM-CSF低濃度領域で細胞死が認められた。今後、この実験系で細胞の寿命や細胞死、分化に関係する遺伝子を解析しそれらの発現制御法を検討する予定である。
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