研究概要 |
分化を誘導することにより癌細胞の増殖性や腫瘍性を喪失させようとする制癌の研究が,非リンパ球性白血病細胞を中心に行なわれ、さまざまな分化誘導物質が明らかにされてきた。トランス型のレチノイン酸(all-trans retinoic acid;ATRA)が急性前骨髄球性白血病(APL)患者に著効を示すことが明らかとなり分化誘導療法に光明を与えることになったが、その有効性はAPLに限局されており、患者数の多い骨髄芽球、単芽球の分化段階にある白血病に対しては、ATRAを含め有効な分化誘導剤は開発されていない。本研究では急性骨髄性白血病に対する分化誘導療法の新しいストラテジーを確立することを目的としてin vitro培養系でヒト骨髄性白血病細胞ML-1およびKG-1を顆粒球方向へ分化誘導することを試みた。その結果レチノイン酸とGM-CSFを併用すると顆粒球の特徴である分葉核あるいは桿状核をもった細胞が多数出現し、顆粒球がもつ表面抗原(CD15)が現われた。この時、C-mycやMybなどのがん遺伝子の発現が24時間以内に著しく低下し、DNA合成活性が著しく低下した。またアポトーシスを抑制するbcl-2遺伝子の発現が低下し、一週間後にはほとんど消失した。細胞死を起こしやすい状態になっていることが示唆された。今後、この実験系で細胞の寿命や薬剤感受性、マクロファージによる貧食などを検討していく予定である。
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