1.モルモット血漿PAFアセチルヒドロラーゼのcDNAクローニング(初年度) 精製モルモット血漿PAFアセチルヒドロラーゼ(分子量63kDa)をリジルエンドペプチダーゼ処理し、得られた9個のペプチド断片のアミノ酸配列を気相法シークエンサーにより決定した。この配列をもとに、モルモット肝臓mRNAから調製した1st strand cDNAをテンプレートとしてPCRを行い、約600bpの特異的フラグメントを得た。これをプローブとし、モルモット肝臓cDNAライブラリー30万pfuををスクリーニングした結果、4個のポジティブクローンを得た。ところがN末端部分が含まれていないことが判明したため、5'RACE法により欠損部分を得た。塩基配列より予想されるタンパクは436アミノ酸(推定分子量49kDa)から成り、セリンエステラーゼに典型的なモチーフとアスパラギン結合型糖鎖により修飾可能な配列3個所を有していた。 2.組換モルモット血漿PAFアセチルヒドロラーゼの発現と特異的抗体の作製(最終年度) His tagを有する発現ベクターを用いて大腸菌に発現させ、本遺伝子産物が活性を持つことを確認した。リコンビナント酵素をNi^+カラムおよびSDS-PAGEによって精製した。リコンビナントタンパクをウサギに免疫して特異的抗体を得た。この抗体は血漿中の63kDaの蛋自質と反応することから、本酵素は糖鎖付加などの翻訳後修飾を受けている可能性が考えられる。この修飾の生理的意義については今後明らかにしていかなければならない。 このほかヒト酵素のcDNAクローニングと、アデノウイルスベクターを用いた哺乳動物細胞での発現実験を行った。現在、ゲノムDNAのクローニングを実施中である。これまでに肝臓およびマクロファージでエストラジオールによって、またマスト細胞ではインターロイキンにより本酵素の発現調節が行われていることが示唆されている。今後、プロモーター領域の解析と免疫化学的手法を組みあわせることにより、分子レベルでこれらの発現調節機構を解析していく方針である。さらに病態への関与についても検討していきたい。
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