(1)PSA-3へのIL-1α前駆体発現ベクターの導入:IL-1αのプロセシングと分泌の連関機構におけるPSの細胞内での役割を明らかにするためPS要求性チャイニーズハムスター細胞株(PSA-3;国立予防衛生研究所西島正弘部長より分与)を利用した。この細胞はPSのない通常の培地では次第にその含量を減らすので、同じ細胞でPSの含量の異なる状態を作り出すことができる。IL-1α前駆体cDNA(野生株)をプラスミドpEF-BOSに挿入し、これらをpSV2neoとともに、CaCl_2法により、PSA-3細胞に導入した。G418によってネオマイシン耐性株を選択した後、それぞれのクローンについて細胞溶解液を調製し、そのIL-1活性をIL-1とIL-2の両方に依存性のD10G4N細胞を用いて定量した。このようにして、目的の遺伝子導入細胞を得た。 (2)遺伝子導入細胞におけるIL-1αのプロセシングと分泌:野生株を導入された細胞を用いて、それらでのIL-1αのプロセシングと分泌を、細胞を^<35>Sメチオニンで標識した後、カルシウムイオノフォアを加え培養して、その培養上清と細胞溶解液とについて、抗IL-1α抗体で免疫沈降し、SDS-PAGEによって解析した。その結果、PSを除去してもしなくてもIL-1αのプロセシングと分泌は同じように起こっているように見えた。 (3)IL-1αのリン脂質との相互作用(静岡県立大学の奥直人博士との共同研究):IL-1αをPSまたはPCのリポソームに作用させ蛍光性低分子物質(カルセイン)の遊離を調べたところ、PSの時に限りpHが6.5以下で時間に応じて遊離がみられた。この過程はμMオーダーのカルシウムによって促進された。また、分子量の40kDaの蛍光性高分子物質(デキストラン)の遊離も観察された。しかし、これはIL-1βではみられなかった。
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