研究課題
本研究計画の平成7年度では、私が提唱している分泌抑制機構にはアクチンの重合脱重合と燐酸化脱燐酸化反応がからんでいることを明らかにした。そこで平成8年度では、この分泌抑制機構の生理的意義について明らかにすることを目的として、分泌の発生と脱感作の両面から検討を行った。RBL-2H3細胞にムスカリン受容体のm3サブタイプを発現させたクローン(RBL-m3)細胞は、カルバコール(CCh)で受容体を刺激することにより、IgE受容体刺激の場合に匹敵する程度の分泌を引き起こす。CCh誘起の分泌も抗原誘起の場合と同様に、分泌抑制機構の特徴を呈したことにより、分泌抑制解除機構が、IgE受容体のみならず他の受容体刺激においても見られることが示唆された。さて、この分泌抑制の解除機構は受容体刺激に依存するが細胞内Ca^<2+>には依存しない。細胞内Ca^<2+>非存在下でCChによりRBL-m3細胞を強く活性化し続けると(脱感作処理)、その後のCChや抗原による分泌量が低下した。この脱感作には、分泌に至る受容体共役反応中の細胞内Ca^<2+>に依存しない部分の変化が関与していることが明らかになったが、このことは脱感作処理により分泌抑制を解除する系を強く刺激したことで解除機構が変化を受けた結果分泌量が変化したと考えられた。そしてその部分がmembrane ruffling等の細胞の形態変化に至る情報伝達系であることをはじめて明らかにしたが、そのことは細胞の形態変化と分泌抑制の解除機構との関連性を示唆している。このように、RBL-2H3細胞の調節性分泌は、おそらく、個々の細分泌の能力に関する部分でmembrane rufflingに至る細胞内情報伝達系によって巧みに調節を受けていると考えられ、membrane rufflingに至る細胞内情報伝達系は分泌の感作脱感作の新たな発生部位であることが明らかとなった。
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