研究概要 |
1.PLA_2の触媒機構の解明-オキサゾリジノン型基質アナログを基本構造に持つ種々のリン脂質アナログによるPLA_2の阻害を調べた結果,オキザゾリジノン環のケト基とエーテル基,および4位の窒素原子に結合するアシル基がPLA_2の阻害に重要であり,オキサゾリジノン環の5位へのホスホコリンの置換は,PLA_2とオキサゾリジノン環との相互作用を弱めることがわかった.また,種々のアルデヒドテルペノイドによるPLA_2の不活性化を調べた結果,比較的低分子のモノテルペンがLys残基を修飾することによってPLA_2を不活性化し,この化合物の幾何異性と2重結合の位置が重要であることがわかった.また,モデル反応実験からこのモノテルペンはシッフ塩基生成後,安定な環状構造の付加物を生成することが明らかとなった. 2.PLCの触媒機構の解明-Bacillus cereus菌由来PC-PLCのLyso-PCを基質とする酵素反応パラメーターのpH依存性を調べ,PCを基質として得られた結果と比較したところ,どちらの基質を用いても触媒活性には3つの,基質結合には1つのアミノ酸残基の関与が確認された.しかし,Lyso-PCとPCの間で基質が結合することによって起こるアミノ酸残基のpkシフトに違いが見られた.また,同菌由来SMaseのmutantであるD156Gを用いてHNPを基質とする酵素反応パラメータのpH依存性を調べた結果,Asp-156はHNPに対する結合や加水分解能を弱めることが明らかとなった.さらにSMを基質に用いて調べた結果,触媒活性には,HNPの触媒作用に影響をおよぼすアルカリ領域にpk値を持つアミノ酸残基の関与が見られなくなった.この結果から,このアミノ酸残基は,SMaseの触媒作用に本質的に必須でないか,またはSMと結合した酵素の遷移状態複合体におけるpK値が8.5(測定した最大pH)よりもアルカリ性側にシフトした可能性が考えられる.
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