抗精神病薬ハロペリドール(HP)の長期投与時にみられる遅延性ジスキネージアやパーキンソニズムなどの神経毒性発現と関連するカチオン性代謝物生成(HPP+)に関与する薬物代謝酵素系について、平成7および8年度の研究では肝臓内P450(CYP3A)が関与するカチオン性代謝物生成(HPP+)反応を明らかにした。今年度は脳組織におけるHPのHPP+生成反応について検討した。以下に得られた結果を示した。 1)HPと脳組織ホモジネートとのインキュベーションにより代謝物HPP+生成を確認した。また、その生成活性はHPの脱水化合物HPTPでは、HPに比べ数十倍高い。2)脳組織細胞オルガネラ中、ミトコンドリア画分(P-2画分)において代謝物HPP+生成活性が有意に高く、また、その代謝物HPP+生成反応は肝臓内での反応とは異なり、NADPH非依存性であった。3)MAO阻害剤DeprenylやCIorgylineにより、代謝物HPP+生成活性は約1割程度の抑制を示した。4)反応系中にCytochromecおよび有機過酸化物を添加することにより、代謝物HPP+生成活性が有意に促進された。これらの結果より、脳組織内でも、HP由来やチオン性代謝物生成反応がみられ、この反応には肝臓内における薬物代謝酵素(CYP3A分子種)と異なる酵素率が関与していることが明らかにされた。この酵素系として有機過酸化物が関連するペルオキシダーゼ系が示唆された。
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