研究概要 |
1.市販缶入り飲料(コーヒー,緑茶,ウ-ロン茶,紅茶,杜仲茶)を,水道水群を対照として雄ラットに20日間,または10日間自由摂取させ,それぞれ21日目または11日目に屠殺して肝ミクロソームを調製し,シトクロムP450系に及ぼす影響につき検討した.2.各飲料中のカフェイン含量(mg/100ml)は,コーヒー34.0,緑茶14.1、ウ-ロン茶19.4,紅茶14.3,杜仲茶0.0で,この値と各飲料の飲用量から計算すると,コーヒー群でのラット1匹当たりのカフェイン1日摂取量は8mgとなった.他の飲料群ではこの約半分,またはそれ以下となる.3.緑茶,ウ-ロン茶,紅茶の主要カテキンたる(-)エピカテキン,(-)エピカテキンガレート,(-)エピガロカテキンおよび(-)エピガロカテキンガレートの各含量はロット間でかなり変動するが,その総量は13〜26mg%となり,カフェイン含量と似たレベルであった.4.各飲料の摂取量は対照群にくらべ有意差はなかったが,体重は20日間の飲用実験で,コーヒー群と杜仲茶で有意な増加の抑制がみられた.ただし,その機序については検討していない.5.対照群にくらべ,コーヒー群ではP450含量の有意な増加とともに,それに並行して7-エトキシレゾルフィンO-脱エチル化(EROD)活性,アセトアニリド水酸化活性およびテストステロンβ-水酸化(6β-OH化)活性の有意な上昇がみられ,P450の1Aと3Aサブファミリーの誘導が示唆された.また,この結果に付随してベンツフェタミンN-脱メチル化活性の有意な低下やテストステロン2α-および16α水酸化活性の低下傾向がみられ,常在性のP4502C11の減少が示唆された.6.以上のP450系の変化の主因は主成分の1つ,カフェインによると考えられるが,お茶類よりカフェインを除去した飲料にも,EROD活性,6β-OH化活性の有意な上昇がみられることから,カテキン類にも弱いながらカフェイン類似の誘導作用がある可能性が示唆された.ただし,これを積極的に支持するデーターは得られなかった.
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