1.ヒト血球をFicolによって分画し、それぞれよりRNAを調製し、AhR(TCDDレセプター)mRNAの発現量をRT-PCR法によって調べた。その結果、リンパ球、顆粒球に比べ単球に非常に高い発現がみられた。このことからAhRの発現の個人差を調べた際に見られた血球中のAhRの高い発現は単球に由来することが明らかとなった。さらに以前AhR臓器分布において、肺に高い発現がみられたが、これは肺胞マクロファージにおいて発現されているのかもしれない。実際、ヒト気管支肺胞洗浄液中より得られたマクロファージにAhRの高い発現がみられた。 2.ヒト血球細胞株(HL-60、HEL)をTPAやVD_3などの分化誘導剤で処理し、単球・マクロファージ系へ分化させ、その分化過程におけるAhRmRNAの発現量の変化を調べた。その結果、AhRmRNAの発現がマクロファージ系の分化に伴って増加してくることが明らかとなった。さらに単球・マクロファージ系の細胞株および分化誘導した細胞株のみ添加されたメチルコランスレンに反応してCYP1A1が誘導された。これまでの研究結果は、AhRがヒト血球中においては、monocyte-macrophage-linageの分化とともに発現してくることを示している。これは外来異物の処理というマクロファージの機能に合致するものであろう。このことはAhRの生理機能を考える上で非常に興味深い。今後さらにin vitroの系を用いて、AhRの発現制御の分子機構を解明していきたい。
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