ファゴサイトーシス(貪食作用)とは、微小粒子を細胞膜に包みながら細胞内に取り込む現象をいう。本年度の研究として、スフィンゴ脂質やコレステロールといった細胞膜脂質が貪食作用に関わっている可能性を検討した。先ず、CHO細胞において、ラテックスビーズ結合活性および取り込み活性を定量するアッセイ法を開発した。CHO細胞におけるラテックスビーズ取り込み活性は、スフィンゴ脂質やコレステロールの細胞内含量が正常量の50%以下に減少してもほとんど変化がなかった。すなわち、これらの膜脂質の貪食作用への関与を見いだすことは使用した条件の範囲内ではできなかった。しかし、以下に述べるように、テックスビーズの細胞への結合に重要な役割を果たしている細胞膜構成因子を本研究の遂行中に重いがけず見いだした。 ラテックスビーズは貪食作用のプローブとして汎用されているが、その膜受容体は不明であった。CHO細胞のラテックスビーズ結合活性および取り込み活性が、培地へのヘパリン等ポリアニオンの添加または細胞のヘパリチナーゼ処理によって強く阻害されること、および、プロテオグリカン生合成の欠損したCHO細胞変異株ではほぼ完全にラテックスビーズ結合活性が失われていることを見いだした。これらの結果から、CHO細胞においては、膜表面プロテオグリカンがラテックスビーズの受容体となっていることが明らかとなった。さまざまな病原性微生物が宿主表面プロテオグリカンを受容体として細胞内寄生することが知られており、CHO細胞のラテックスビーズ貪食は、このような病原性微生物取り込みのモデル系となることを示唆した。
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