我々は、動物細胞におけるホスファチジルセリン(PS)の生合成機構とその調節機構を明らかにすることを目的に、チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞由来CHO-KI細胞株からPS代謝変異株、及びPS代謝に関する遺伝子を分離し、その解析を行っている。昨年度までに、PS合成酵素I(PSS I)変異株とPS合成酵素II(PSS II)変異株を分離し、さらにこれら酵素のcDNAとPS脱炭酸酵素のcDNAも分離した。本年度は以下に示す研究成果を得た。 1)PSS I欠損変異株は細胞増殖に外因性PSを要求するが、同変異株にPSS IIを過剰発現させるとPSが正常レベル合成され、PS非要求性が相補されることを明らかにした。従って、PSS IIがPSS Iの代償となりうることが示された。 2)PSS Iに細胞内のPS量に応じて自身の触媒活性を調節する制御部位が存在することを明らかにした。 3)PSS Iを昆虫細胞で大量発現させる系を確立した。この系を用いることによりPSS Iを精製することが可能と思われ、精製したPSS Iを用い、同酵素の活性調節機構を解析する予定である。
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