研究概要 |
背景:我々は以前に、CHO-K1細胞株から細胞増殖にPSを要求する変異株(PSA-3株)を分離し、PSA-3株がPSの生合成に著しい損傷を有することを示した。PSA-3株の解析より、CHO細胞には少なくとも2種類のPS合成酵素(PSSIとII)存在し、PSA-3株は、PSS Iと名付けた酵素に損傷を有することが明らかにされた。さらに,PSA‐3株にPS非要求性を与えることのできる2種類のCHOのcDNA(pssAとpssCと名付けた)を分離した。 研究成果:(1)合成pssAペプチドに対する抗体を用い、pssA遺伝子がPSS Iをコードすることを示した。(2)pssC遺伝子が、3段階の翻訳後修飾(ペプチド結合の切断)を経て活性型となるミトコンドリアのPS脱炭酸酵素をコードすることを明らかにした。3)pssA cDNAと類維持した塩基配列を有するCHOのcDNA(pssBと名付けた)を分離し、同cDNAがPSS IIをコードすることを明らかにした。cDNA塩基配列から推定されるPSS IIは、約55kDの膜を9回貫通するタンパク質であった。(4)PSS IとIIの両者に損傷を有する変異株(♯16株)をPSA‐3株より分離することに成功した。♯16株の解析から、PSS IIがホスファチジルエタノールアミンをPSに変換することを明らかにした。(5)PSS Iに自身の触媒活性を調節する部位が存在し、その調節に関与するアミノ酸残基を同定した。(6)PSS IとIIを精製する目的で、昆虫細胞でPSS IとIIを大量発現する方法を開発した。
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