癌光化学治療は、副作用の少ない治療法として注目されているが、癌組織集積性が低いという欠点がある。特に次世代の光化学治療剤として注目されるベンゾポルフィリン誘導体(BPD)は脂溶性が高く製剤化が困難であり、癌への蓄積量も低い。本研究ではBPDを申請者らの開発したRES回避リポソームへの組み込むことにより、安定な製剤化と癌集積性の向上を試みた。まずBPDのリポソーム化と効率的な癌組織への送達を検討し、レーザー照射による腫瘍の増殖抑制、延命効果などについて詳細に検討した。実際にMeth A肉腫担癌マウスを用いたBPD含有RES回避リポソームの光化学治療に成功した。また申請者らの開発したポジトロンCT(PET)を用いたリポソーム体内動態のリアルタイム解析系により、リポソームの体内動態について種々の検討を行った。この結果、長期血中滞留型リポソームでも、我々の用いているグルクロン酸誘導体、あるいはPEG修飾したものは、投与初期から癌集積が高いこと、この癌集積にはリポソームサイズの影響が大きく、100nm以下のものが最も好ましいことなどが明らかとなった。次にBPDの体内動態について検討したが、一部のものは、リポ蛋白に移行して癌に集積するため、当初の目的には完全には合わなかったが、リポソーム化により明らかに治療効果が上がった点はRES回避リポソームによるパッシブターゲティングのためと考えられた。今後はリポソーム化に関してさらに改良を加える予定である。
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