平成8年は、ビオプリテン(BPH4)のNOラジカル(以下、NO)に対する消去活性を種々の化学的NO発生剤を用い、ESR法および培養細胞毒性に対する抑制作用から、さらに、インビボでのBPH4の有する抗酸化活性の有効性をラット虚血/再還流脳障害モデルで検討、以下の結果を得た。 1.BPH4のNOに対する消去活性をESR法にて検討したが、測定法に問題があり、結論を出すに至らなかった。 2.ラット副腎髄質褐色細胞由来PC12細胞およびヒト前骨髄性白血病由来HL-60細胞を用いて、化学的NO発生剤による細胞障害に対するBPH4の作用を検討すると、いずれの細胞に対しても濃度依存的にNO誘導細胞障害を抑制した。 3.さらに、生体において活性酸素ラジカルによる脳神経細胞障害モデルの一つであると考えられている脳虚血/再還流をラットに作製し、インビボでのBPH4の有効性を検討した。この結果、BPH4処理群では、虚血/再還流により生じた海馬CA1錐体細胞の脱落が抑制され、またLocomotor activity(情動の変化)の増加が低下する傾向が見られ、BPH4のインビボでの有効性が確認された。 4.最後に、脳内ドーパミン自身が遊離するラジカルにより発症することが明らかとなっているパーキンソン病に対するBPH4の抗酸化活性を介した抑制作用を、DOPAによるPC12細胞障害実験から検討した。この結果、DOPAはスパーオキサイドアニオンラジカルを遊離し、細胞障害を惹起した。この障害はBPH4により抑制された。 以上、本研究で、BPH4がラジカルがその成因あるいは進展に関与するドーパミン神経細胞をはじめとする種々の細胞障害を防御することから、パーキンソン病をはじめとする種々の脳障害の予防・治療薬としての可能性を示唆することができた。しかしながら、当初予定していたNOとBPH4との直接的な相互作用については、いまだ報告するに至っていないが、遊離されたNOがBPH4と直接作用し、NO自身の有する種々の生理活性が制御される可能性が多いに推定される。BPH4によるNOの生理活性の制御については、NOによるアポトーシスを実験モデルに用い、今後、さらに詳細に検討する予定である。
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