研究概要 |
塩基脱離型保護基(Fmoc基)をもつPNAを合成方法として,N-(2-aminoetyl)glycineをethylendiamineとglyoxylic acidからステップで得ることができたが,溶解性や取り扱いの難しさから,疏水性の高い骨格を利用して目的物を得る経路を検討した.すなわち,ethylendiamineとtert-butyl bromoacetateを反応させtert-butyl N-(2-aminoethyl)glycinateを得ることができた.この物質は,tert-butylエステルをもつのでN-(2-aminoetyl)-glycineに比べ疎水性で,水に溶けにくく,酢酸エチルエステルなどに溶けやすい性質を有する.これによって,このステップでの精製は抽出操作によって簡便に行うことができる.また,Fmoc化も有機溶媒中で行えるので,N-Fmoc-tert-butyl N-(2-aminoetyl)glycinateを効率よく得ることができた.また,tert-butylエステルはトリフルオロ酢酸や塩酸などの酸で除去される. 核酸塩基の保護基として,今まで一般に使用されてきたcarbobenzoxyからmonomethoxytrityl(Mmt)基に交換することで,大幅に塩基の溶解性を向上させることができた.しかも,Mmt基はトリフルオロ酢酸や酢酸などの弱酸によって除去されるが,塩酸などの強酸では除去されにくい.これを利用すると,Fmoctert-butyl N-(2-aminoethyl)glycinateとMmt塩基を通常の方法でカップリングした後に,C末端のtert-butyl基だけをを塩酸で除去できることが判明した. 4種類のPNAとトリプタミンで構成されるdipeptideについて,蛍光滴定法によって9-ethylguanineに対する会合定数を求めたが,2残基では塩基依存的な選択性はみることはできなかった.また,導入するインドール化合物としてL-トリプトファンやD-トリプトファンなどのキラリティーを有するアミノ酸を選択することで,選択性の変化を検討している.
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