研究概要 |
生命活動は,生体内での非常に多くの種類の分子同士の相互作用から生まれる現象によって維持されている.それら相互作用には,同種又は異種分子間で様々な形態が考えられる.それらの組み合わせは,多様な高次構造を形成することが可能であり,しかもその特徴的構造は生体の機能上も重要であると考えられる. このような小さな相互作用の組み合わせが生み出す,分子間の認識や作用機序のあり方を体系づけることを目的として,平成7,8年度にPNAを含むハイブリッド型ジペプチドを合成した.これらの蛍光滴定法によって,核酸塩基に対する親和性が相補性に反して,シトシン塩基を含む誘導体が一律にやや高めの会合定数をもつことを示した.このことは,ハイブリッドジペプチドのサイズが小さいため塩基の特異性が現れにくいのか,アミノ酸側鎖の特性のために起きているのは判断できなかった.しかし,平成9年度にはシトシンと組み合わせるアミノ酸の種類を充実し,またPNAのバックボーンのタイプを変更するなど,塩基・アミノ酸以外のファクターも検討したが,ハイブリッドジペプチドのもつ傾向はおなじであった. これを基に,シトシン塩基を以前から我々が行ってきたPNA骨格をもたないタイプのハイブリッドジペプチドを合成し,その結晶構造を解析した.ハイブリッドジペプチドといしてはTrp,Tyr,Pheなどの芳香族アミノ酸を中心に,Ala,Ileなどのアルキル基を持つものを試みている.Trp,Tyr,Alaを含むハイブリッドジペプチドの解析は終了したが,Phe,Ileを含むものは自己会合をすることが判明しており,その構造的特徴の解析を検討している.
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