生命倫理教育の評価法の開発

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07672437
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 赤林 朗 東京大学, 医学部, 助手 (70221710)
• 研究分担者: 甲斐 一郎 東京大学, 医学部, 助教授 (30126023) ; 大井 玄 東京大学, 医学部, 名誉教授 (70114410) ; 山岸 明子 順天堂医療短期大学, 助教授 (40220248)
• キーワード: 生命倫理 / 医療倫理 / 教育評価法 / 質問紙 / テスト・バッテリ- / 医学教育 / 看護教育

研究概要

本年度はまず、昨年度に完成させた、倫理的問題点を同定するための「問題点同定テスト」と道徳的意味づけを評価するための「Rest's DIT(Definig Issues Test)」とのテスト・バッテリ-を使用し、医学部・看護学部在籍中及び卒業後早期の期間に、前述の2つの指標がどのように変化するかについての調査を行った。そして、医学・看護学教育の全教育過程が学生の倫理的問題解決力に及ぼす影響を検討した。
調査は、(1)ある看護学部において1年〜3年生及び卒業後2年以内の勤務経験のある看護婦;(2)ある医学部において、1年〜6年生及び卒業後2年以内の研修医各々約100名づつ(計約900名)を対象に、上記のテスト・バッテリ-を施行した。
看護学部においては、問題点同定力は年次が上になるにつれて上昇した。道徳的意味づけについては、Kohlbergによる発達ステージには変化が見られなかったが、実務経験のある卒業生においては「安楽死の薬を飲ませるべきではない」という選択の比率が増加した。患者に対する機会を持つベッド・サイド授業や、実際の臨床現場での経験がこれらの変化に影響を与えていることが示唆された。医学生については全て調査は終了し、現在結果を解析中である。
次に、研究代表者の所属する大学で行われている生命・医療倫理学の授業において、倫理的問題点を見つけるためのカリキュラムを組み、その前後で受講者にテスト・バッテリ-を施行し、上記2つの指標の授業による変化を調べた。道徳的意味づけについては発達ステージには変化が見られなかったが、問題点同定力は授業後に有意に上昇した。このことは特定のカリキュラム施行により、その教育効果が認められたことを示唆する。以上より、本研究によって生命・医療倫理教育の効果のある側面を適切に評価する方法が開発されたと言えよう。今後更にいくつかの教育場面で適用し、改良していきたい。

研究成果

• [文献書誌] Akabayashi,A: "The Concept of Happiness in Oriental Thought and its Significance in Cinical Medicine" Japanese and Western Bioethics,Philosophy & Medicine. 54. 161-164 (1997)
• [文献書誌] Sass,HM,Bonkovsky,FO,Akabayashi,A,et al.: "Advance Health Care Documents in Multicultural Perspectives" Annuol Review of Law & Ethics. (in press). (1997)
• [文献書誌] 赤林 朗: "バイオエシックスの展開と看護研究における倫理" インターナショナル・ナーシングレビュー. 20(1). 54-58 (1997)
• [文献書誌] 辻内 琢也ら: "阪神・淡路大震災における心身医学的諸問題(II)" 心身医学. 36(8). 658-665 (1996)
• [文献書誌] 赤林 朗: "医の倫理" 心身医学を学ぶ人のために(医学書院). 168-169 (1996)
• [文献書誌] Tang,C,Akabayashi,A,et al.: "Hypothalamic Golanin Gene Expression and Peptide Levels in Relation to Insblin:Possible Role in Energy Balance" Neuroendocrinology. (in press). (1997)
• [文献書誌] 星野一正 編著 土田友章、赤林朗 編集協力: "死の尊厳-日米の生命倫理" 思文閣出版(京都), 364 (1995)