平成8年度から大阪大学医学部保健学科3年次生を対象に開講される医療情報学および医療情報学演習においては、その教育目標を「社会医療情報システムおよび病院情報システムの開発を通じて、システム構築の方法を教授する。」とした。 ここで、開発するシステムは、その基本となるデータベースの構造として、従来の病院情報システムと異なり、患者個人のデータを一塊としてあつかう個人データベースを採用することとし、その基本設計をおこなった。 さらに、その個人データベースの応用範囲をひろげ、病院情報だけでなく、個人が生まれてから死ぬまでの健康管理をふくめた完全時系列個人データベースとし、これをパーソナル・ヘルス・データベース(PHDB)と名づけた。 このデータベースの特徴は、追記のみおこなう完全時系列で、個人が受けた医療・健康管理の行為を記録するものである。このために、まず、医療・健康管理の行為となる動詞および行為を行う主体者の調査・整理からおこなった。さらに、その行為(動詞)のもつパラメータを整理した。医療行為そのものは進歩するものであり、医療言語およびその用法は追加されていくものであるが、医療言語としての文法および語用辞典の骨格ができた。 次の段階として、このデータ構造と現在使用されている病院情報システムのデータ構造をリンクさせ、病院情報システムと完全時系列データの共存をはかる予定である。そのために平成8年度の医療情報学演習の課題として、垂直分散型の病院情報システムを構築するために、病院のそれぞれの部局のシステム構築を行う予定である。
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