これまで本研究者は(1)遺伝性高チロジン血症1型原因遺伝子のクローン化、(2)本疾患での遺伝子変異の解明、(3)本疾患で二次的に障害される4-ヒドロキシフェニルピルビン酸酸化酵素(HPD)の遺伝子構造の解明を達成した。さらに(4)高チロジン血症マウスにおける遺伝子異常の同定と、その異常がチロジン代謝に与える影響について明かにした。今年度の研究では(1)遺伝性高チロジン血症3型モデルマウスに対する組み換えアデノウイルスを用いた遺伝子治療実験(2)遺伝性高チロジン血症1型モデルマウスの作成と、その肝細胞障害機序について検討した。まず、ヒトHPDを発現する組み換えアデノウイルスをHpd欠損マウスに投与した。この組み換えウイルスにはCAGプロモーターを用いた。その結果、肝臓特異的にヒトHPDの発現が達成された。同時に、血中チロジン値は速やかに低下し、投与後12時間では正常レベルに達した。その効果は、約3〜4週間持続した。しかし、1度ウイルスを投与したマウスに、同じ組み換えウイルスを再投与したところ、血中チロジン値の低下は観察されなかった。ヒトHPDmRNAの発現は肝臓以外では確認できなかった。またヒトこれらの検討の結果、本研究者が作成した組み換えウイルスはHpd欠損マウスの高チロジン血症を正常化したが、その効果は、一過性で、また再投与には反応しないことが判明した。一方、CAGプロモーターは肝細胞における遺伝子発現には適していることも明かになった。次にHPD欠損マウスとアルビノ致死マウスを交配し、Hpd/Fahの2重欠損マウスを作成した。このマウスは生存する遺伝性高チロジン血症1型のモデルマウスとして利用できる。このマウスに上述の組み換えアデノウイルスを投与し、肝細胞内でヒトHPDを発現したところ、肝細胞障害が出現した。これは本来のFAH欠損による肝細胞障害と考えられた。
|