バスタ液剤(BST)は主成分グルホシネートアンモニウム(GLA)を18.5%と陰イオン系界面活性剤のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(AES)を30%、グリコール類(GLY)を10%含有する除草剤である。BSTの服毒中毒は近年、わが国で増加しており、中枢神経症状(意識レベル低下、痙攣、呼吸停止など)と、末梢血管抵抗の低下を伴う循環不全をきたすことが知られている。このBSTによる循環不全において、それぞれの成分がどのような役割を果たしているのかを解明する目的で研究を行なった。[方法]In vitroの実験では、ラットの摘出右心房、左心房、胸部大動脈をクレブスリンゲル液中に懸垂し、右心房では心拍数、左心房では電気刺激による収縮力等尺性張力、大動脈では等尺性張力測定を測定しながら、BST中の各成分を累積的に添加した場合の変化を記録した。In vivoの実験系ではウレタン麻酔下にラットの大腿動脈から血圧と心拍数を測定しながら、BST中の各成分を投与した場合の変化を記録した。[結果と考察]In vitroの系で、BSTとAESは同程度の陽性変力作用を示したが、高濃度では陰性変時変力作用を示した。また、大動脈に対しては弛緩作用を示した。GLAとGLYはなんら作用を持たなかった。In vivoの系で、BSTとAESは同程度の血圧の低下と心拍数の軽度上昇をもたらしたが、大量投与により血圧も心拍数も低下した。GLAとGLYはなんら作用をもたらさなかった。以上の結果より、BSTによる循環系への直接作用の原因は主成分GLやGLYではなくAESによると考えられた。
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