血管収縮反応は細胞内カルシウムイオン濃度により調節されていると考えられているが刺激の種類や弛緩薬の種類によっては必ずしもカルシウム濃度と収縮反応は相関性が無いところから、カルシウム-カルモデュリン依存性ミオシン軽鎖リン酸化反応に加えてそのカルシウム感受性を制御する機構が存在することが示唆されている。その中の有力な1つにカルポニンのリン酸化反応の関与が考えられる。カルポニンは平滑筋に豊富に存在するアクチン結合蛋白質でアクトミオシンのATPase活性を阻害するが、この作用はプロテインキナーゼCによりリン酸化されると減弱することが明らかとなっている。このカルポニンのリン酸化反応が生筋レベルで平滑筋収縮機序にどのように関与しているのか明らかにすることで今まで説明できなかった平滑筋収縮機序の解明を試みるのが本研究の目的である。その結果、我々は、^<32>Pでラベルしたブタ冠動脈で、ホルボールエステルおよびエンドセリン-1による収縮時にカルポニンがリン酸化されることを見い出した。さらに、カルポニンのリン酸化酵素について、プロテインキナーゼC阻害剤GF109203Xの作用や2次元ペプチドマップアによる解析により検討を行ったところ、ホルボールエステルおよびエンドセリン-1で収縮したブタ冠動脈において、カルポニンのリン酸化酵素はプロテインキナーゼCであることが示唆され、プロテインキナーゼCによるアクチン側の血管平滑筋調節機構の存在を示した。
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